カテゴリー : 意見評論

『告白』を見た人たちの次の10年

彼女と映画『告白』について話していた。

私が映画『告白』を去年見たときのインパクトは、概ね都人士が受けた衝撃と大差がないだろう。否、寧ろ上映が終わったあとも金縛りにあったかのように動けず、何ら言葉を発せなかった私は、実は最も衝撃を受けた層の一人だったのかもしれない。

ウィキペディアを見ていてふと気づいたが、2010年に告白が公開される10年前、2000年はあの名作「バトル・ロワイアル」が公開された歳だった。深作欣二監督晩年の作であるが、あの映画は当時日本に衝撃をもたらした。映画の中にある暴力的シーンの数々や、グロテスクをそのまま絵にしたような描写、そもそも原作が原作とはいえ、「若い子どもが殺し合いをする」ということ、すなわち殺人に対するタブーを打ち破ったかのような強烈なメッセージ、そして生への固執。映画の芸術的に、また脚本的な評価は一定以上のものがあったと認知しているが、それ以上に世間を騒がせた映画だった。

R-15指定を受けたあの映画は、「特別篇」として、R-15を「掻い潜った」バージョンとして、結果的に全ての国民が見る機会を与えられた。そしてその4年後、「佐世保小6女児同級生殺害事件」が起きる。犯人の小6の子供(以下、加害女児とする)は、姉のレンタルビデオ屋のカードを不正に利用し、バトル・ロワイアルを複数回鑑賞したことが調べで分かっている。また、加害女児はバトル・ロワイアルを模倣した内容となっている小説を自ら柿、その小説の中で被害女児と同じ苗字の子を殺害している。

「バトル・ロワイアル」は、社会心理学的に影響があったと言えるのだろうか。結論から言えば、これはあったと言えるだろう。加害女児の、映画を繰り返し見てそれに感化された小説を書くという行為自体、並大抵の事ではない。そもそも、それだけの強い印象をあたえる可能性があったが為に、R-15指定だったことを踏まえれば、犯行の残虐性を鑑みても、一定の影響があったと認めることに異議を唱える人はいないだろう。

では、「バトル・ロワイアル」という映画は、存在してはいけなかったのか。私は、この類の問いには否定的な考えを持つ。
そもそも、 加害女児が被害女児に対して殺意を持った理由は、些細な言葉による傷つきから、嫌がらせへと発展し、それが更に悪い方向に進んだ結果であった。すなわち、映画は動機「そのもの」ではない。犯行の残虐性を鑑みれば、確かに映画そのものと類似する部分もあり、犯行ないしは「殺人」に対する具現化されたイメージを醸成する一因となったことは否定出来ない。しかしながら、それは犯行の残虐性そのものの話であり、他の方法で殺害を実行した可能性だってあるだろう。勿論、影響が全くなかったということを言っているわけではない。あくまで、存在してはいけなかったのか、という観点から捉えたときには、その主張は行き過ぎではないだろうか、ということだ。

映画に限らず、物事には良い側面と悪い側面がある。前衛的な作品であった「バトル・ロワイアル」の芸術性や主張が社会に与えた良い側面もあるだろう。従って、一長一短なのである。

さて、本題。

映画『告白』 が、同様に社会に与える影響とはなんだろうか、という議論を彼女としていた。良い側面については、もう十分に評価されているところであり、改めて私から説明する必要はないだろう。なので省く。悪い側面についてを検証していきたい。

この映画が与える悪い側面として何が起きるだろうか、という点を考えると、切っても切れないのが「エイズ」だろう。桜宮先生がエイズになり、その血液を混入した牛乳が登場する。この導入部の強烈な出来事を冷静に今考えただけでも戦慄が走るが、ふと「これが実際の社会で起きたりはしないだろうか」と考えたりはしないだろうか。

HIV感染者は日本でも着実に増えてきている。(参考(レッドリボン特集):http://redribbon.yahoo.co.jp/know/02.html) すなわち、映画と同等の状況を再現することは決して不可能ではない。
ただ念の為記述しておくが、HIVに感染した血液を牛乳に混入し、それを飲用したことでHIVに感染する確率は、決して高くない。(HIVウイルスは一般的に空気に触れることによって効用が弱まるとされている)要は、非現実的なのである。

では、(自分が)HIVウイルスに感染していることを承知の上で、感染を防ぐ措置をせずに性交渉(等)をすることによって、性交渉(等)の相手をHIVに感染させることは傷害罪に当たるのだろうか。
この問いには二点の論点がある。即ち、性病に「感染」させた時点で「傷害」が成り立つのかどうか、そして「感染させないように努力する」ということを行わなかった場合、それが傷害罪として成立するのか、ということだ。この問いに対しては、判例という形で実は既に解釈が出ている。

(前略)傷害罪は他人の身体の生理的機能を毀損するものである以上、その手段が何であるかを問はないのであり、本件のごとく暴行によらずに病毒を他人に感染させる場合にも成立するのである。従つて、これと見解を異にする論旨は採用できない(中略)性病を感染させる懸念あることを認識して本件所為に及び他人に病毒を感染させた以上、当然傷害罪は成立するのであるから論旨は理由なき見解というべく、憲法違反の問題も成立する余地がない。(後略)

昭和二七年六月六日 最高裁判所 判決文

この判決文における病毒は、HIVではなかったが、類推されるに上記の状況において傷害罪が適用される可能性は高いだろう。
はっきり言って、こんなことが起きる可能性は皆無に等しいだろう、と思う。正直言って、HIV感染をしている人は、まず自分の病気に対しての意識を考え、まずそういったことを考えもしないだろう。然し、全ては「だろう」であり、それを描写してしまった『告白』が「事件のアイデアになった」とかにならなければいいのだが。

さて元来、HIVはタブー視されていたものだったが、この数年は社会的取り組みから、HIVに対する認知、更には予防や検診に対する認知も広がってきた。然しながら、やはりHIVに対するタブーは依然として日本人に強い。(極端な話、付き合っているパートナーとの初めての性交渉で、HIVの感染を聞くことがあるだろうか。また、話題に出すだろうか。)映画『告白』が、社会的にHIVに対する認知を上げたという良い側面もあるだろうが、悪い側面として、上記に書いたような犯罪や、更に悪意を持った行為が発生するということも、、、物理的な可能性として否定はできないだろう。

R-15を外すような話もあるらしい。バトル・ロワイアルの時もそうだった。ただ、中学生なり小学生があれを見たときに(脚本的内容に大きな変化がないとした場合)間違いなく給食の「牛乳」で大騒ぎする子供たちがどっかにいるだろうし、例えば「HIV」という悪口がいじめで使われるようになる、といったことも想定される。様々な悪い側面も想定されるが、それは先程のバトル・ロワイアルと同じように、「映画が加害者に与えた影響はあったが、それが即ち映画の存在を否定するものではない」だろう。

奇しくも、バトル・ロワイアルの3Dが公開されたらしい。
この10年間で、重犯罪の低年齢化が顕著になった。附属池田小の無差別殺人事件から10年でもある。告白を見た人たちの次の10年は、如何になるだろうか。そしてその時、映画『告白』がどのように評価されるのであろうか。望まれないのは、映画の芸術性についての評価をなおざりにして、あたかも犯罪の動機そのもの、ないしは犯罪助長の元凶のようないわれをされることだ。

言い訳の様になるだろうが、最後に2つ書いておく。HIVに感染をした人達は苦しんでいる。目に見えない病気で、死と隣り合わせな病気と苦しんでいる。そういった人達の事を思うと、こういった映画が与える影響を含め、HIV感染者の人達の心を心配せざるをえない。しかし、病気と戦っている人達こそが、本当にHIVの苦しさを知っているからこそ、可能性がゼロとは言えない映画の描写と同様のことは、間違いなく起きないだろうと私は信じている。そして、小説の内容を素晴らしい表現力で動画にしてしまった中島監督の演出力には、今でも頭が下がる。映画『告白』は、2010年最も素晴らしい映画だったということに、私は異論がない。

メモ:iTunesConnectMobile

開発中に気になったのでメモ。誰かの役に立てば。

iPhoneアプリ開発者が、その後のDL数などを把握する為には、当然iTunes Connectにアクセスしなければならない訳だけれども、日本時間の更新時間はだいたい19時~20時だそうです。でもその時間ってお酒飲んでたり電車の中だったりもするわけで。

そんな方々の為にAppleが自信を持ってオススメする(?)iTunes Connect Mobileですが、これがiTunes App Storeで検索しても全然出てこないんですよ、っていう話。ちなみに以後はApple公認の省略表記「iTc Mobile」で。

このiTc Mobileをダウンロードする方法は、実はDeveloperGuideに書いてありました。

iTunes Connect Mobile can be downloaded from the iTunes Connect Home page. The download link will take
you to iTunes Connect Mobile on the App Store your download however, iTC Mobile cannot be searched for
directly in the App Store.

ということで、iTunes Connect のページの最下部(これ言い訳するわけじゃないけれどノートパソコンだと見えにくい!)にリンクがあります!
ちなみに直リンクはこれ:http://itunes.com/apps/iTunesConnectMobile

以上

勝手気ままに都知事選の展望

今のところ出馬するという噂の方々と出馬宣言の方々について、勝手な展望。
以下、出馬するだろうって人たち(順不同・太字は出馬宣言済み)

  • 石原慎太郎 東京都知事(でも四選不出馬という噂も)
  • 村田蓮舫 内閣府特命担当大臣・参議院議員 (通称:蓮舫)
  • 渡邉美樹 ワタミ株式会社創業者(出馬前までは同社代表取締役会長)
  • 東国原英夫 前宮崎県知事
  • 小池晃 共産党政策委員長
  • 中松義郎 日本文化振興会会長 (通称:ドクター中松)
  • 山口節生 不動産鑑定士
  • 舛添要一 参議院議員 元厚生労働大臣
  • 内田裕也 歌手

以下、一人ひとりの展望。

石原慎太郎氏
今まで三選されているという実績自体は、非常に大きいと言わざるをえないだろう。 第一、前回の選挙では約300万票を取って、得票率はだいたい50%だった。ただ、懸念事項は当然多いわけで、東京五輪招致の失敗や、昨今話題の東京都条例(有害図書指定)の問題なんかは、一部の層に大きな支障を与えるに違いないと思う。ただ、国政に対する挑戦的な態度などを含めて考えれば、さして大きな問題にはならないだろう。というか、根本的に彼は出馬するのか!?

蓮舫氏
そもそも出馬するのかもわからないが、出馬を求められた場合には検討すると明言している。この4年間の実績という意味では、ある意味大きな(?)実績はあるとはいえ、その本当の意味での実績には甚だ疑問がつく。特に仕分けの暗部があれだけ報道されている中で、民主党の国務大臣級が、仮にも東京都知事という一首長となった場合に、いったい誰がストッパーになるんだという疑問は出てくるだろう。そういう点を考えて、彼女が出馬したところで絶対的優位にはならないだろう。また、マスコミ露出は大きいとはいえ、そういった層をどれだけ取り込めるかという点で、石原氏が出馬した場合には怪しいと言わざるをえない。

渡邉美樹
結局出馬宣言をしてしまいました。彼に付いては、まだ不明瞭な点があって、それはみんなの党がどれだけ支援するかということ。公認が出るような話になれば、確かに大きな話でもある。まあ実際のところ、みんなの党にとっては、首長ポストの獲得しかも東京都知事というのは大きいが、そんなに大した支援は出来ないだろう。(渡邊氏の個人資産がどれだけ動くかも楽しみではあるけれど)実際にみんなの党が動き、渡辺喜美氏が積極的に支援するような事になれば、これは一気に上位を狙えるポジションかもしれない。あとはワタミ株式会社というイメージ。特に若い世代(居酒屋)と高齢世代(介護事業)にとって、どういう印象かということを適切に判断した場合、必ずしもプラスにはならないだろう。

東国原英夫氏
今回のもうひとつの目玉でもある「そのまんま東」こと、東国原英夫氏。4年前に「ひがしこくばる」が言えなかった人も今は言えない人がむしろいないだろうというこの全国的知名度をどれだけ引っ張れるか。また、当時政策を一緒に練ったチーム東国原の起動があるのかどうか、というのが焦点。蓮舫氏とぶつかった場合には、マスコミ露出と好印象という意味で、票は間違いなくこっちに動くだろう。大きなマイナスポイントというのは難しいところでもあるが、果たして九州出身者が東京に出てきた彼をどう評価するか。まあでも宮崎県知事はもう決まっているわけだから、ここは迎え入れるのかな。石原さんとぶつからない限り、ここは最上位だろう。

小池晃氏
まあ共産党は独自候補立てるわな、間違いないわけで。んで、前回は吉田万三氏だったが、今回は小池氏になったわけで、、、ちなみに前回はだいたい63万票。 勝利かどうかというよりは、共産党に対する有権者の意識調査という意味で期待したい。特に、石原氏には入れたくない、蓮舫氏には入れたくないという票が流れる先として可能性が高い。そういう共産党の意識する「反自民反民主層」をどこまで拾えるか。

中松義郎氏
また、「ドクタードクタードクターなかまつっ!」を聞く日は来るのだろうか。ちなみに前回は無所属で8万票も得ている彼ですが、プラス要素はともかくマイナス要素として某政党とのつながり。もちろん固定票は増えるだろうが、その票田について、そして宗教政党について前面に出すような戦略をすれば、間違いなく票を落とす、だろう。

山口節生氏
前回出馬して、3500票ぐらいだった人。僕この人よくわからないのでパス。

舛添要一氏
一時期の時の人でもあり、あの時は「総理大臣にふさわしい人」とかだったが、新党改革旗揚げとその時のいざこざで、もう終わった人になってしまった感が否めない。さあ今回はどれだけ、というのもあるが。。。正直、いっちょあがりに近いだろう。あんまり票は見込めないと思う。個人的には頑張って欲しいんだが。。。あと東京に昔から(?)いる人なんかは、古い人だという感覚を99年都知事選でよぎるだろう。(でもあの時80万票とってるんだよな)

内田裕也氏
パワー・トゥ・ザ・ピープル! 1991年東京都知事選第5位。もう何も言うまい。これを見てくれ。

外山恒一氏
彼に付いても何も言うまい。2007年東京都知事選第8位。また九州から出てきたら、是非とも一度お目にかかりたい。これを見てくれ。

と、まあ最後の方は若干ネタではあるが、色々と書いてみた。
他にもいろいろな方々の出馬が目されている。嘘かどうかはともかく、以下にWikipediaに書いてあったもの。

石原慎太郎
猪瀬直樹
東国原英夫
蓮舫
海江田万里
長妻昭
小宮山洋子
円より子
小池百合子
石原伸晃
丸山和也
田中康夫
舛添要一
鳩山邦夫
山田宏
中田宏
松沢成文
辛坊治郎
黒岩祐治
安藤優子
小宮悦子
櫻井よしこ
渡邉美樹
内田裕也

ということで、どうなることやら。(上記リストはWikipediaから引用した。個人的には、鳩山邦夫氏、中田宏氏、辛坊治郎氏、櫻井よしこ氏なんかは出馬しないと思っている。)

またそのうち続報でも書くか。