ユニバーサルサービスの多様化と展望

冒頭、この記事は以前4代目「鮎の日記帳」でも書きましたが、今の会社や僕の起業精神の根底にあることなので、再掲しておきます。

現在、ジャッグジャパンで行っている業務をはじめ、自分が目指している将来の野望なるものは、日本国内における様々な商活動のユニバーサルサービス化にほぼ等しいと考えている。

簡単にいえば、日本国内のどこにいても、都心に生活している人々と同等の公平性・安定性のある商取引が可能になる状況にしたいということ。例えば東京都世田谷区に住んでいようが、北海道ニセコ市に住んでいようが、沖縄県那覇市に住んでいようが、(物理的に解決し得ない問題を除き)平等な商取引が可能になればいいと思っている。

そもそもユニバーサルサービスって?

ユニバーサルサービス(Universal service)とは、社会インフラストラクチャーである通信・放送・郵便や生活インフラストラクチャーである電気・ガス・水道、公共サービスである福祉・介護など、全国民が公平かつ安定的に利用できるべきサービスである。 —Wikipedia 「ユニバーサルサービス」より引用

例えば、日本郵便の封書(第1種郵便物)は、日本全国一律で80円(25gまで)だ。これは例えば、極端な話、隣人宅に郵送するのも、(現在日本において民間人が到達できる)最北端である宗谷岬から、最西嘴である与那国島まで郵送した場合も、同じ費用である。

このことは、多くの方も御存知だろう。2005年の衆議院議員選挙は、まさに郵政民営化に関するユニバーサルサービスの存続について議論が交わされた。民営化された中で、地方の郵便についての涙ぐるしい努力などが語られたこともあるだろう。

例えば、電話。固定電話たるNTT東日本ならびにNTT西日本は、供給義務があると同時に、電気通信事業法にて以下のように定められている。

(基礎的電気通信役務の提供)
第七条  基礎的電気通信役務(国民生活に不可欠であるためあまねく日本全国における提供が確保されるべきものとして総務省令で定める電気通信役務をいう。以下同じ。)を提供する電気通信事業者は、その適切、公平かつ安定的な提供に努めなければならない。

これにより、例えばNTT東日本の場合、料金体系は市内通話・市外通話(隣接・20km~60km・60km~)・県外通話と分かれている。この場合、小笠原諸島の人が東京23区に電話する場合は、料金体系として市外(60km~)が適用されるべきところだが(※東京と小笠原諸島父島とは約1000km離れている)特例措置として、離島と通話需要等の面で最も緊密な関係を有する近隣MA1カ所に対して、隣接料金を適用することとなっている。

これらのように、離島であろうが距離に関係なく、全国均一のサービスを提供することが、ユニバーサルサービスの大きな概念であると言えよう。

なぜ推進したいと考えるのか

一言で言ってしまえば、出自や場所は関係ないというところだろうか。
殆どの場合、物心ついた時に自分が住んでいる場所というのは、自分の意志によって決められたものではなく、家族環境によって決定される要因であり、それはある意味本人にとってはどうしようもないことなのだと考えられる。

例えば、青春期においてCDを買うにしても、渋谷まで30分で行かれる人と、そうではなく県庁所在地まで2時間はかかる人とがいたとして、彼らはCDに対する欲求に大きな差別はない。同等の欲求に対して提供される供給は明らかに違うのである。時間や旅費といったコスト、そして品揃えの悪さ(多くの場合流通や流行の拡散時期に要因を持つ)が立ちはだかる。

ここまで述べておいて、古い考えだというご指摘は甘んじてお受けしよう。それはなぜなら、平成という時代となって早二十二年、日本人は「インターネット」という発明を、ここまで広く使えるサービスとした。ブロードバンド普及率に限って言えば、韓国に次ぐ世界二位であることは、非常に大きなインフラであろう。

しかし、次が流通である。国内の多くの流通業者は、やはり距離別の運賃制度を設けている。これは至極当然のように見えることだが、やはり今現在も流通費用(運賃)は高いと言わざるを得ない。デフレが進行する日本において、低価格競争の障壁になりつつある流通に頭を悩ませるイーコマース関係者は多いだろう。

実際、北海道・沖縄県及び離島に在住する方々への運賃は殆どが特別料金である。北海道が532万人、沖縄県が130万人の人口を有していること、また有人離島と呼ばれる島が国内には230島あり、40万人以上の人口があるという。(「離島の現状について」(平成18年・国土交通省都市・地域整備局調べ) 彼らは、最も明確な流通障壁問題の被害者である。

そして、私自身は「距離別の運賃制度」についても疑問を呈さざるを得ない。
日本郵便は、レターパック(旧エクスパック)など、小さい荷物を中心に全国一律サービスを始めつつあり、また冒頭に述べた郵便サービスにおいては、多くの運送会社が全国一律であるメール便サービスを始めている。しかし、未だ多くの運輸は全国一律ではない。

大きな疑問、とまでは正直思っていない。距離別でコストが変化するのは理解できる。しかし、これでは厳しい産業があるのだ。

地方活性化の大きな障壁

以前から地方活性化に対しての活動・研究を行っている中で、可能性を探るのが、地方の製造業・小売業におけるインターネットの活用だ。先述の言葉を用いれば「イーコマース」のことである。これらの可能性を探るときに大きな問題となるのが、先ほどの距離別運送料金なのだ。

例えば、沖縄の名産品を沖縄直送で送ろうとすれば、沖縄県以外の殆どの送付先に対して、運送の特別料金がかかるだろう。東京や大阪のように中日本と呼ばれる場所で交通インフラが整っている場所でもない限り、この問題は(金額の大小は有るが)付きまとう。

沖縄の経済発展については戦後の本土復帰以降、沖縄問題のおそらくは最も重要なところであると考えられるが、沖縄の産業発展に一番悪い意味で貢献しているのが、これなのではないだろうか。

弊社の取り組み

弊社が中古本を販売するルートは、Amazon社のサービス(Amazonフルフィルメント)である。これは、Amazon社の流通倉庫に在庫を置き、注文後の受注管理・梱包・発送・代金回収までを全てAmazon社に一括依頼することができるサービスである。Amazonに出品している会社のおよそ9割は、このサービスを利用せず、独自の流通経路を利用しているが、送料分がどうしてもかかってしまう。

しかし、Amazon社のAmazonフルフィルメントを利用することの最大のメリットは、巨大マーケットであるAmazonの流通インフラを利用することにより、日本全国に一律の送料で届けられるということだ。それほど大きな会社だから出来たことだろうが、これにより弊社は「日本全国送料無料」を標榜することができる。

しかし、中古本1冊、しかも数百円から「送料無料」としている店舗は、まだまだ少ない。これはAmazonのみならず、中古本専門店である同業各社、他マーケット出品者もそうだ。これでは、教育に欠かせない出版物、中古本を読む機会を「流通」が奪っていっていると述べても過言ではないだろう。

総括

こういう流通における問題は、国内にはまだまだどんな業種でも沢山あるだろう。
一番心苦しいのは、地域活性化の為に、地域の特産物を販売する手段として、最も優れているはずのイーコマースがここまで発展した日本でも、流通の問題がまだ存在しているということだ。

しかし、考えてみてほしい。この日本は島国ではあるが、世界で比べたら非常に小さい国だ。飛行機であれば1~3時間で十分に移動できる距離でもある。高速道路の整備や新幹線の整備と、主要となる交通インフラは整っており、高速道路の無料化など、インフラに対する考え方はまだまだ熱い国でもある。第一、成人した日本人であれば、多くの方々が沖縄か北海道に足を運んだ経験者も多いだろう。地理的に小さいという特徴は、あと数万年、数十万年しても変わらないかもしれない。その特性を考えたときに、この流通の問題を再度考え直す機会が、実はもう来ているのではないか、という疑問をここに提示し、個人的な意見の総括としておく。


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